2015年08月22日

タクシーの怖い話 あの世との境界線

あれは私が高校生だった頃のこと。


部活で帰りが遅くなってしまった。


辺りはもう真っ暗。


駅から自宅までは、歩いて1時間半の道のりだ。


普段は自転車を使っているのだが、今日は朝行くとき母が車で送ってくれたため、歩いて帰らないといけなかった。


田舎道なので街灯もほとんどなく、真っ暗なのだ。


さすがに、女子高生が一人で歩くには危険すぎる。


母に迎えに来てもらおうと、携帯で自宅に電話した。


すると、母はパート先のトラブルでちょうど今呼び出されてしまい、しばらく迎えに来られないのだという。


うちは父が車の免許を持っていないため、母しか車で迎えに来てくれないのだ。


母は、お金出してあげるからタクシーで帰ってきなさいと、言ってくれた。


だが、問題点もあった。


駅前と言っても、住宅街でも繁華街でもない寂れた田舎の駅で、タクシーはなかなか捕まらないのだ。


ふと見ると、運の良いことに一台のタクシーが停まっていた。


私はラッキーとばかりに、そのタクシーに乗り込み、自宅の住所を伝えた。


タクシーが走り出すと、部活の疲れからか、すぐに夢の世界へと落ちていった。


・・・ふと目を覚ました。


とても長い時間寝てしまったように思えた。


まだ着かないのかな。


タクシーの窓から見える外は、真っ暗でよく見えないが、山道のようだった。


砂利の上を走っているのか、ガタガタという振動が体に伝わってくる。


駅から自宅の間にこんな道はないはずだ。


運転手さんが道を間違えてしまったのだと、直感的に判断した。


「あの、すみません。道、間違えてませんか?」


「・・・・・・・・・」


「あのっ。」


「・・・間違えていませんよ・・・ちゃんと、お連れしますから・・・・」


ボソボソとしてよく聞き取れない、陰気な声。


私は運転手の顔を覗き込もうとしたがよく見えない。


暗い靄みたいなものがかかっているのだ。


辺りが暗いせいなのか、寝起きで頭がぼーっとしているせいなのか。


私は怖くなってしまった。


とっさに携帯を取り出して、自宅に電話をしようとした。


だが、携帯は圏外だった。


不思議なことに、時刻を見ると、私がタクシーに乗ったであろう時間からほとんど経過していないのだ。


念のため、自宅に電話した時間を確認してみた。


すると、時間が経過していないどころか、タクシーに乗った時間そのものなのだ。


私は携帯の時計が壊れてしまったのだと思った。


「あの、運転手さん。今何時ですか?」


「・・・・・・・・・・」


「あのー。時間教えてください。」


返事はない。


益々、怖くなってしまった私は、このあたりから体が震えだしてしまう。


何となく直感的に「怯えていることを悟られてはダメだ」と思うものの、体の震えを止めることはできなかった。


ガタガタガタガタと、体が震える。


携帯で電波を何度も何度も確認する。


「お願い、電波入って!」


と心の中で何度叫んだことか。


でも、その願いは一向に届く気配はない。


もう駄目だ、ここから逃げ出したい、と心は限界に達していた。


そして、なんとか正常を装った声を絞り出した。


「もう、停めてください。降ろしてください。」


「・・・・・・・・・・・」


やはり、返事はない。


携帯の時計が壊れてしまったこと、圏外で電波が届かないこと、何よりもその状況そのものが得体が知れなかった。


何が何だかわからない恐怖と言えばよいのだろうか?


自分が誘拐されているのか、変質者にさらわれているのか、よく分からない。


分かるのは、とにかく怖いということだけだった。


「降ろしてください・・・お願いです・・・降ろしてください・・・・」


もう、泣きながらお願いしていた。


怯えているのを相手に悟られてはダメだと思いつつも我慢できなかったのだ。


運転手は相変わらず、こちらのことを無視している。


もう、いっそのこと車から飛び降りてしまおうか、などと私が考え始めたころ、運転手が何やらブツブツとつぶやきだした。


「・・・・・・・・・やっぱり・・・・・・・・・・すき・・・・・・すきになんて・・・・・・なっちゃ・・・・だめ・・・・なんだ・・・・・・・」


「あの、もうここで降ろしてください!」


「・・・・・やっぱり・・・・すきになっちゃ・・・・・だめだったんだ・・・・・・」


「ほんとに降ろしてくださいっ!」


「・・・・・あっちのせかいのこを・・・・・すきになっちゃ・・・・・だめだたんだ・・・・・」


「お願いです。お願いです。もう降ろしてください。」


私は泣き叫んでいた。


幾度となく、このやり取りを繰り返した。


最初のうちは、ブツブツ何を言っているのか分からなかった運転手の言葉も、何十回何百回と聞き続ければ、何を言っているのか分かってきた。


何を言っているのか分かっても、意味は分からなかった。


この人は完全に頭のおかしい人なんだと、それだけは理解できた。


とにかく誰かに助けてほしかった。


どれくらい「降ろしてほしい」と頼んだだろうか。


私の声は枯れてきていて、かすれている。


そして、運転手はやっとまともなことを言ってくれたのだ。


「・・・・・・わかったよ・・・・・もとのせかいに・・・・かえしてあげるよ・・・・・」


その言葉を聞いたとたんに、私は物凄い睡魔に襲われてしまった。


寝てはいけない、寝たら殺される、そう思ってもダメだった。


あっという間に、私は眠りに落ちていった。


・・・・・・・・・・・長い時間眠った気がする。


目を覚ますと、そこは自宅の真ん前だった。


私は自宅の真ん前で目を覚ましたのだ。


タクシーの中にいたはずなのに、地面で眠っていたようだ。


助かった!


私は急いで家の中に飛び込んだ。


驚いていたのは母親だった。


私が泣いていること、声がかれていること。


そして何よりも母が驚いていたのは、私が家に帰ってきたのは、母と電話をした直後だったというのだ。


「あ、タクシー見つけた。今からタクシー乗るね。」


と、私が電話を切ってから30秒もしないうちに、家に帰ってきたというのだ。


そんなバカな、と思うのだが、確かに携帯の履歴時間などから考えても、母の言っている通りだった。


私は、一瞬にして家の前にワープしていたのだ。


あのタクシーに乗っている時間は何だったのだろうか?


一体どれくらいあの中にいたのか分からないが、体感時間としては最低でも3〜4時間はいたのではないかと思う。


眠っていたことを考えても、それくらいはいたと考えないとおかしいのだ。


それなのに、時計は全く進んでいなかったのだ。


どう考えてもおかしい。


おかしなところが多すぎた。


でも、当日に私が思ったことはただ1つだった。


生きて帰ってこられて本当に良かった、ということだ。


あれから何年も経った今も、あの出来事が何だったのか、さっぱりわからない。


でも、一般的な常識では考えられないことが起きていたことは確かだと思っている。


おかしな人だと思われたくないため、家族以外ほとんど人には言っていない。


もう2度と体験したくない恐ろしい出来事だった。


終わり


posted by ぬーベー at 21:14 | 実話 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
2015年07月22日

山小屋の窓から覗くマッドピエロ4

前回→山小屋の窓から覗くマッドピエロ3


扉を叩いているのは、間違いなくさっき見たピエロだ。


姿の確認をしたわけでもないのに、ピエロが全力で玄関扉を叩いている姿が目に浮かんできて、俺の全身を恐怖が支配する。


部屋中回っても、電波が通じる場所はない。


ドンドンドンドンドンドンドンドン


扉を叩くのを止めないのは、ここが電波の通じない場所で、警察が来られないということを知っているためか?


俺たちは恐怖で、パニック状態だった。


突然。


友達は何を思ったのか、スタスタと玄関の扉の前まで行くと、


「あ、あの〜・・・どちら様ですか・・・?」


完全に震えたか細い声で、尋ねていた。


この異常なドアの叩き方からして考えられないことではあるが、もしかすると近隣住人が訪ねてきたのかもしれないなどと考えたのかもしれない。


外からは返事がない。


相変わらず扉を叩くだけ。


ドンドンドンドンドンドンドンドン


ドンドンドンドンドンドンドンドン


「あ・・・あの〜・・・いい加減辞めてもらえませんか・・・?か、帰ってください・・・」


怯えきった声で友達は言っている。


ドンドンドンドンドンドンドンドン


ドンドンドンドンドンドンドンドン


鳴りやまないドアの音。


友達はその場にヘタレこんで、下を向いてしまった。


泣いているように見えた。


大げさかもしれないが、俺には彼が生きることを諦めたようにも見えた。


ここで座り込むなんて、俺にはできない。


恐怖で足はガタガタだったけれど、何かあったらすぐに逃げ出そうと思っていた。


・・・・時間の感覚が分からないが、扉の音は止んでいた。


手には携帯を握りしめてはたが、時間の確認はしていない。


無性にトイレに行きたかったが、怖くて行けない。


もう、漏れるか、膀胱が破裂するのではないかというくらいの尿意だったが、それでもトイレに行く勇気はなかった。


最悪の場合、漏らせばいいくらいに思っていたのかもしれない。


駄目だ・・・もうトイレが限界だ・・・


俺がそう思ったとき、友達もふとこちらを見た。


しばらくぶりに目を合わせた気がする。


「トイレ行かない?」


俺が誘うと、友達も力なく頷き、こう言ってきた。


「ちょっと漏らしてるよ俺。」


漏らしてると言われても、全く汚いという感じもしなかったし、ダサいなどとも思わなかった。


この状況なら当然だ、くらいに考えていた。


二人でトイレに行き、戻ってくると、ソファーに座り一息ついた。


座ってみて思ったのだが、ずいぶん長いこと突っ立っていたせいか、足が異様に疲れていることに気が付いた。


まるで棒のようだ。


もう大丈夫か?


ピエロはいなくなったのか?


俺たちは朝まで無言もまま起きていた。


・・・日が昇り始め、部屋に光が届いてくると、すぐに帰り支度というか荷物を手にする。


話し合っていたわけではないが、友達も同じ行動をしていた。


こんな場所、すぐにでも逃げ出したかったのだ。


俺たちは、怖かったが意を決して、外に飛び出すと、走って山道を下った。


お互いに一睡もしていないし、疲れ切った身体だったが、それらを凌駕するほど怖かったのだ。


バス停まで来たときに、はじめて足を止めた気がする。


とにかく息が上がっていたが、辺りをキョロキョロと見まわすのだけはやめなかった。


バスに乗り、駅に着くと、俺たちは警察に電話すべきか、友達の親戚の人に電話すべきかマ話し合った。


俺はすぐに警察を呼ぶべきだと主張したが、友達は親戚の意見を聞きたいと言っている。


駅にいる安心感からか、俺は友達の意見を尊重した。


親戚の人と友達は電話でしばらく話し込んでいた。


電話が終わると、友達は申し訳なさそうに言っていた。


「とりあえず、警察への通報は待ってほしいってさ・・・」


俺は多少怒りがこみあげてはきたものの、今はとにかく疲れていたから、家に帰りたかった。


その後、結局警察への通報もしなかったし、このことはうやむやになったままになってしまった。


あのときのピエロはいったい何者だったのか?


そして、何が目的であの別荘に入ろうとしていたのか?


今となってはすべてが謎のままだ。


終わり
posted by ぬーベー at 05:00 | 実話 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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