2014年09月26日

小学生夏休みの恐怖 家出と怪人5

前回→小学生夏休みの恐怖 家出と怪人4


懐中電灯の明かりが、俺のいる室内を照らし始めた。


丸い円状の光が、一瞬俺の足元をかすめる。


もう、口から心臓が飛び出してしまうのではないかと思えるほどだった。


捕まったら何をされるのか分からない。


最悪殺されてしまうだろう。


大声で泣き出したい衝動に駆られるも、泣いてしまったらそれこそ終わりなのだ。


泣くことを必死で抑えこみ、恐怖と戦い、出来る限り身を小さくしていた。


でも、俺は薄々感じていたんだ。


もう、これで終わりだ、と。


逃げ場はない上に、この絶望的な状況だ。


おそらく、男が室内へ懐中電灯を向けている数秒の間に、俺は膨大なことを考えていた気がする。


そして、悟っていた。


もう、「生」とはお別れだと・・・


俺が自分の死を覚悟しかけていた、そのとき。


廊下で、誰かが走る音が聞こえた。


バタバタバタバタバタ


男の足音ではない。


きっと、友達の誰かが、廊下のどこかに隠れていて、走り出した音だった。


次の瞬間に、男の怒鳴り声が聞こえた。


「待て、コラ!クソガキっー!!」


そして、男の懐中電灯の光と足音は、すごいスピードで遠ざかって行った。


俺は心底ほっとした。


言葉では言い表せないくらいホッとしていた。


もう、あまりにも体中の筋肉がゆるんで、おしっこを漏らしてしまうのではないかと思えるくらいに。


友達の足音が聞こえるのが、後数秒違っていたら、俺は男に見つかっていたに違いなかった。


あの男が何者なのか知らないけれど、こんな夜中にこんな廃墟のビルで覆面を被っているくらいだ。


きっと危ない人間に違いないのだ。


何が何だか分からぬまま、俺はその場にヘタレこんでしまっていた。


・・・・・どれくらい経過しただろうか。


もう、誰の足音も聞こえないし、声も聞こえない。


フラフラしながら、俺は1階出口へと向かった。


ビルの入り口からは少し遠めに停めてある俺たちの自転車。


チャリのところまで行くと、6台停めてあった自転車も、もうそこには2台しかなかった。


そうか、みんな逃げたんだな。


俺も自転車にまたがると、残りの自転車は誰の物か確認した。


ユウタという友達のチャリだった。


その時、俺は少しだけ安心した。


ユウタなら、きっと大丈夫だと思えたからだ。


ビルから逃げ出してきて、自分の身の安全が確保されると、今度は友達の身が心配になる。


ほとんどの奴は逃げたみたいだけど、自転車を見る限りユウタだけがまだビル内にいるらしい。


ユウタは、仲間内で一番頭がキレる奴で、運動神経も良い。


あいつならきっと捕まらない。


そんなことを考えながらも、俺はダッシュで逃げ出した。


暗い夜道の中、とにかく自転車を漕いだのだった。


続き→小学生夏休みの恐怖 家出と怪人6


posted by ぬーベー at 21:21 | 実話 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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