2013年01月15日

本当にあった海の怖い話4


前回→本当にあった海の怖い話3


お互い、数十秒沈黙した。


俺には聞きたいことが山ほどあるのだが、なんて聞けばよいのか、どれから聞けばよいのか迷っていたのかもしれない。



すばるさんは、黙って手に持った水をちびちび飲んでいる。



「えっと、溺れたのは、俺じゃないですよ。俺の友達です。」



俺は考えた末、カマをかけた。



この話に乗っかってきたら、この人は霊能者じゃない。



「へーそうですか。じゃあ、私の勘違いです^^」



あれ?



流された。



「あのさっき、チビちゃんがどうとか言ってませんでした?」



たまらず俺は聞いた。



「ああ、私の勘違いなのですから、気になさらず^^」



なんだか、すべてを見透かしたように笑っている。



嫌味な笑いとか、冷笑とかではない。



とても温かな笑顔だ。


だけど、すべてを見透かしたような目。



こんな不思議な人には、後にも先も会ったことがない。



「あの、先ほど言ったことは嘘です。すみません。海でぼれかけたの俺です。」



「ああ、知っていますよ^^あなたが、私を警戒してカマかけたことも^^」



なんなんだ、この人は?



「教えてください。さっきのチビちゃんの話!」



俺は、そのチビちゃんのことがどうしても気になって仕方がなかったのだ。



すばるさんは、軽く微笑みながらゆっくり頷くと、口を開いた。



「あなたが、小さいころ。これは小学生くらいかな。白い猫ちゃん飼ってましたでしょう?猫にしては太ってる子で、名前は良く聞こえないな。最後の文字が「お」ですか?」



俺はトンカチで頭を殴られたような気分だった。



確かに、俺が小学5年生までうちには「シロスケ」という猫がいた。



俺が産まれてすぐ家族に拾われたらしく、俺とともに兄弟のように成長し、人生の相棒的な存在だった。



5年生になる直前に、病気で亡くなってしまったシロスケ。



あの時は、1年以上立ち直れずに学校にもしばらく通えなくなるほどだった。



そして、シロスケのことを俺だけは「シロオ」と呼んでいたのだ。



最後の文字が「お」の、太った白猫だった。



驚愕のあまり、俺はただ首を縦に振ることしかできずにいた。



すばるさんは、そのまま続ける。



「そのチビちゃんがね。あなたが海でおぼれたときに、ものすごく怒ったみたいですよ。相手の手にガブガブ噛み付いてますから^^」



「・・・シロオが俺を・・助けてくれたって言うんですか?」



「ええ。私が見えるには、天国って人の心の中にあるのですよ。だから、あなたがチビちゃんを忘れない限り、あなたの中にいますよ^^」



忘れるものか。



一度だって忘れたことなんかない。



俺は心の中で返事をしたはずなのに、すばるさんはそれに対して返事をするかのように続けた。



「そうです、あなたが1度だって忘れていないから、チビちゃんは心の中に住んでます。あなたに敵意を剥き出しにした相手が海にいたので、チビちゃんが怒ってくれたのですよ。チビちゃんいなかったら、あなたそのとき死んでますよ^^」



怖いことをさらっと言うな、この人は。



「あの・・、シロオは・・・・まだ俺の中にいるん・・ですか?」



だんだん、目頭が熱くなり言葉が上手く出なくなってきた。



「ええ。もちろん。あなたが忘れない限りね^^」



そういうと、すばるさんは会釈をしどこかへ消えてしまった。



俺は、その場で下を向き泣き続けた。



ありがとう、ありがとう、シロオ。



もう、お前に心配かけないように、俺強くなるからな。



今度は俺がお前を守ってやるからな。



あと、数十年したら俺もそっち行くから。



そしたら、もうずっと一緒だ。



兄弟仲良く暮らそうな。



終わり


posted by ぬーベー at 08:38 | 本当にあった怖い話 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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